実際、その頃が軍団と僕の距離が一番近かったときかもしれない
スロットのイベントに皆で参加し、あぶれた人間は隣の店で低時給のパチンコで時間を潰す
そうして店が閉店したあとには何度か一緒に食事もした
ただ、そのような時に
「いくら俺らに座られたくないからって、あの配置はないわ」
「以前より丸わかりなんですけどー」
「いやーまじで頭悪いよな」
と大きな声で、さも愉快そうに笑っている、ヒデくんとその後輩を見て、僕は彼らの仲間にはなれないと、つくづく感じていた
店側からすると僕も彼らも同じこと、いうなれば同じ盗人、残飯漁り
だから勝手な持論を展開したり、暴論をふるうつもりもない
好き嫌いの問題
僕は彼らが嫌いだった
そして彼らも、僕のいいとこ取りのやり様を、心底、軽蔑していた
瞬間的に行動を共にしていたものの、袂を分かつのは時間の問題だった
スロット人気が絶頂に達したころであり、日当20万円なんて台が存在する狂った時代に突入していた
パチンコでも色んな攻略があったが、やはり大半はかたく、そして地味なものが多かった
スロットの攻略の価値が跳ね上がり、提供しあう情報のバランスの歪みは、団員の許容できる範囲をゆうに越えていた
そんななか、ノッポさんが提供してくれた沖スロでのテーブル表、拾うべきゲーム数、ゲーム数毎の期待値表
それをもとに僕がまわった店舗は余裕で彼らのテリトリー内だった
本来であれば提供しあう情報のバランスが取れていないのだから、もっと気を使うべきだったのだが、正直、ノッポさんらとのお仲間ごっこはもういいかなと考えていた、そして僕はお金が欲しかった
僕は意識してラインを踏み越えていた
団員の怒りは爆発し、僕と軍団とのやりとりは完全に絶たれた
ただ、ノッポさんとだけは、彼らを刺激しない程度の交流がのこった
僕は、そのことを喜んだ
いつまでも続くスロットイベント、開き続けるパチンコ、僕とノッポさんの軍団は、行動は別々ではあったが、次にアンジェラスでの居場所を作りにとりかかった
総数約250台の小型店、社員、バイト、常連、同業、どこに重きを置くか千万の答えがあると思うが、僕とノッポさんは、『ある程度の利益は棄ててでも、店側の人間を敵に回すのは得策ではない』との共通の答えに辿り着いた
ただ、結論から言うと、ノッポさんの軍団は結果を出すことが出来なかった
#5-Aにつづく