人それぞれ、どうしても治らない癖みたいなものがある
「ぽちくんは集中力、注意力が足りないようです」
と小学生時の通信簿に書いてあったが、数十年経つ今でもどうやら改善されていない様である
当時、忘れ物をするたびに縦に丸いシールを貼っていくグラフ表は、我がクラスでは、ポチだけのために他クラスの倍の長さのシートを使用していた
そもそも、明日〇〇持ってくるように~と言われても、後日シールを張ればいいだけのものと覚える気すらなかった
覚える、ということを放棄した脳味噌は、退化をたどる一方である
その、なにをしなくともどうとでもなるもんだとの気構え、退化した脳味噌は、現在、色んな場面で影響を与えている
パチンコでも、耳栓や手帳、会員証なんかを忘れるのはいいが、携帯電話や財布も平気で忘れる、家の鍵は、家のドアに差しっぱなしなんてこともしょっちゅうだった
財布に関しては二十代の間だけで計五回、紛失額は数十万円にも及び、さすがのポチも上記のものは忘れぬように自分を調教できたが、人の能力というものは決まった数値しかないらしく、一部に集中しようとすると、他の部分が疎かになってくる
三十代になってからは、開店と同時に釘を見ている最中、足元に違和感を感じて視線を落してみると、左に赤い革靴、右に白いスニーカー、と大変ハイセンスな組み合わせに出くわしたりする
ほか、ズボンのジッパーは週一ペースでフルオープン、いつでも全開放で二時間ほど過し、用を足す時分になって気付くのである
それだけならば、まだ笑い話にもなるのだが、全開放の奥底で、まれに、「ブラザー」が下着から「コンニチワ」している時があるから洒落にならない
あと偶然が二つも重なれば、犯罪者の仲間入り
それだけはさすがに、と毎日ジッパーだけはと注意を注ぐようになると、また家の鍵やら会員証やらを忘れるようになる
まあ、犯罪者にはなるよりかはマシだろう、と自分を納得させていた
先日、いつものように会員証を忘れ、再発行の手続きをしてもらっているときの呆れ返った店員さんの表情と、記憶の底にあった、「先生、コンパスを忘れました」と忘れ物シートに向うポチを眺めていた先生の表情が、きれいに重なる
人間変わらんもんだな、と変に感心しつつ、店員さん、昔教鞭をとっていただいた先生、どちらに対してかは分らないが、
「ポンコツで申し訳ありません」
と、心で頭を下げてみた