初対面だったおじさん、「こっちこっち」と手招きしてきました。はて?と思ったものでした。

私が新天地へ転職したのは12年前のこと。初出社の日、乗り合いバスに緊張しつつ乗り込み、運転手さんに挨拶をする。

既に何人かの方が座ってる中、さてどこに座れば?と思った刹那、年配のおじさんが冒頭のように手招きしてきました。

以降、その年配のおじさんことIさんの隣が私の指定席となった訳です。はて、どこかで見かけたことがある気がする、と思ったのでしたが、ああ、どこぞのパチンコ店で通路に立って知人とガハハ笑いしてたおじさんでは?

その通りにて、Iさん「パチンコで勝ってるんやって?来るのを楽しみにしてたんや。どうやったら勝てるん?わしは今まで負けた金で倉が建つくらいや」

パチ友ケンケンさんの紹介で入ったその会社。初出社し教育係の方から仕事の話を聞くも「堅苦しい話はこれくらいにして、○○さんはパチンコ、上手なんやって?」

ケンケンさんが「もうすぐパチンコの先生が来るから、皆勝ち方教えてもらえるよ」と吹聴していたための出来事、でした(汗)。

昼休みも、私の持場とは離れてはいましたがIさんが居る事務所へ行き、パチンコ談義するのが日課になりました。手打ち時代からのパチンコ歴のIさんは、今まで割ったガラスの数知れず、武勇伝?には事欠きませんでした。カウンターの奥にいた主任がカウンターを飛び越えて向かってきた、とか。

「ガラスって弱いもんやな。簡単にパリンと割れよる」とか。

また、「お客さんは出入り禁止にしたハズですが」と言い寄ってきたら「ええやん」で済ませたとか。ハッキリ、Iさんみたく短気で我が強い人をパチンコで勝てるようにするのは並大抵ではないです。海の島でガンガンやってた人はお金が続かず自然に居なくなる、ものです。

Iさんに対して、「勝っても負けても収支を付ける」「保留3個止め」「回転率を意識する」「イベントを活用する」など順を追ってレクチャーしました。現場(ホール)レクチャーも行いました。来る日も来る日も正攻法のシャワーを浴びせ続けました。

やがてIさんの方から、いくら勝った負けた、言ってくるようになりました。当時、銭形平次という絶好の狙い目機種があり、月間でプラスに転じ、年間でも数十万のプラスに転じました。プラスが3年続いて私にこう言いました。

「今までパチンコで勝ってるという人は皆ウソつきだと思ってた。本当に勝ってる人がいる、ことが初めて分かった。」

朝、バスで顔を合わせるとIさんから「昨日はどうやった」が決まり文句。実はバス内は静かにするのが慣例だったことをやがて知りました。Iさんはバス内1番の長老にして強面ゆえ、誰もそれを言ってこなかった、だけでした。

私も、できるだけ小さい声で話すように心がけましたが、返答として「まあまあ良かった」と言えば「それ、わしの負けた分や」とか皮肉が出て、「ダメだった」と言えばウソつき呼ばわりする、めんどくさいことになっていき、自然な感じで席を離すことにしていきました。

1パチ嗜好の人に「そんな台で連チャンしても嬉しないやろ」とか「まだそんなやり方でやっとるんか」などといかにも上から目線で言ったりするようにもなってきてました。

Iさんにとってなんとラウンド間の止め打ちまでできるようになった頼みの銭形平次もハズされ、やがてあまり勝てない時代に入っていったようでした。

「こっちの4パチは全然出とらんのにあっちの1パチはよう出とる。おかしいやろ!店長呼べ!」

「あの店なんかやっとる、絶対!腹立ったからエヴァのハンドルぶち壊したった。なんかブラ~んとなった。」

いや~アカンやろ。パチンコの勝ち方は学べても、性格まではどうしようもない・・にしても、今のパチンコ機のハンドル、力づくで壊そうとして壊れるものなのか?

後日、その店へ行ったら店員が来て、「お客さん、エヴァのハンドル壊したでしょ?」に対して「ああ、あんなやわなハンドルとは思わんかった。」と言った、だって。

さらに後日、友人との話で「某店でハンドルが壊れてて打てない甘デジエヴァの台がある」に、ああ、アレか、と思い出した次第です・・・