サダムな会社再び 

以前書かせていただいた「ほんとにあったアレな話」に登場したサダム社長の会社に勤めていた頃のお話をひとつ。

その会社は、ひらたく言えば「不動産全般を扱う会社」であります。

そして、営業として常時10人程の男性が3つの店に分かれて勤めていたのですが、自分が常駐していたのは1番新しいお店。

大阪のミナミと呼ばれる地域からほんの少しだけ西にずれた、今ではソコソコお洒落な「大阪の代官山」とかラフィンノーズしたくなるような呼ばれ方をしているらしい地域にある店舗でした。

お客さんが店を訪れてくれない限りは、基本的にはチラシを作るくらいしかやることがないので、出勤したら直ぐに前日に作ったチラシを持ってポスティングと称して店を出る。と言う毎日。

ある日は同僚のN君に誘われてパチンコに行ったり、また別の日は車の中で朝から昼寝したり、またまたある日は銭湯で朝風呂してみたり、更には折を見て近所のライバル会社のアレをアレしたり。と、ダメ営業マンライフを満喫しておった訳です。

一応ノルマもありましたので集客活動はガチでやってましたが、立地のお陰で飛び込みのお客さんも多く、案外楽にやらせていただいてましたし、この業種に必ず付いて回る「飛ばし」も取り交ぜていたのでお金にも意外と困りませんでしたね。

なお、「飛ばし」については詳しくは書きませんが、会社を通さないでお仕事をしちゃったりするのかな~?

N君宛の電話

そんなある日の事。

事務仕事をやっつける為に昼過ぎまで会社に居ると、電話が鳴りました。

この電話というのも不在の時は兎も角、新しいお客様からの電話を受けた場合は「新規の顧客獲得かつ、電話応対者がその方の担当」になるため、「誰が最初に電話を受けても、ちゃーんと次の人に平和的に取り次ぐ」と言うルールが設けられておりました。

が、しかし。

先述のN君だけは、事情が合って自分の名前を名乗りません。

ボートレースでガッツリ借金作ってしまっていた彼は若くしてハッサン…ならぬ『破産』しており、知人にも別口でお金を借りていたらしく、稀にその知人から会社宛てに掛かってくる電話を居留守で躱していたのです。

普段から可愛いキャラクターのは1人だけ年齢も20代前半でもあり、店舗の同僚皆で居留守の手伝いをしてあげる。と言うのが、会社の裏ルールでもありました(笑)

しかしある日。自分が受けた電話は様子が違いました。

と言うのも、電話越しに聞こえたきたのが「浪速警察ですが、そちらにNさんって勤めてますよね?」と言う想定外が過ぎる案件でしたのでね。

こちらからNに何のご用件でしょうか?と尋ねても無駄だろうし、聞くまでもなくなんか本物っぽい、てか絶対本物だなコレ。

そういやN君、前に自分で「恐ろしい数の駐車違反の呼び出し無視してんすよ」って言ってたもんな…とか思いながら、自分は敢えて「申し訳ないですが、ホントに貴方が警察の方なのか確かめようがないので、こちらに来てください。」とだけ伝えて切話する事に。

程なく、明らかに眼が堅気じゃ無い2人組(パッと見は普通のおじさん)が自分の居る店舗を訪れてきました。

例の身分証的な二つ折りの何かを見せてくれて、これにて本物確定

本物コンビを応接セットに案内した瞬間、車のキーをクルクル回して、なんなら鼻歌まじりで自動ドアを抜けてくると言う、驚くほどナイスなタイミングで帰社してしまったN君

N君の帰社を確認した本物コンビがなかなかの声量でN君だよね?良かったよ~ここで今日会えなかったら、おうちまで逮捕しに行かなきゃならんかったんだよ。」と、そのままN君を連行していきました。

可愛いN君

「なんだかその後が気になって仕方ない自分」と「N君を可愛がっている先輩」の2人でドナドナ状態となった鬼駐禁破産居留守N君の帰りを待つこと約2時間。

ようやく帰社して来たハッサンN君が言うには「罰金だけで済むんだけど、総額が300万弱なんですよ~。でも100万くらいにオマケしてくれるらしいです。」との事。

それでも結構な額ゆえに(うわぁ…大変だな。。。)と心の中で思いながら、「そ、そうなの?そういえばさ、今月幾ら飛ばして稼いでる?なんか相当ヤッとるでしょ?」と、気になっていた事をハッサン君に尋ねてみる。

で、ハッサンから帰ってきた答えは「300くらいですねぇ」と…。

思わず自分と先輩の二人して笑いを堪え切れず口を衝いたのは「じゃあ払えよ、全額!」

まいど、おおきに。夾竹でした。