最近別の媒体で「台パンして機械をぶっ壊したら幾らくらいの弁済になるのか」みたいなコラムを書いた。傍証のためにいくつか思い出話も書いたけど、書き終えてからふと思い出した話がある。結構どうでもよい話ではあるのだけど、せっかく思い出したのだから、ここで披露して当時のモヤモヤ感とともに悪しき記憶を成仏させようと思う。

あれはパチスロの『北斗』全盛期。だから2003年の中盤とかその辺の話になると思う。

九州の片田舎にも北斗フィーバーはバッチシ押し寄せており、いろんな店が北斗専門店かと見紛わんばかりの勢いで、かの機種を大量導入していた。当時俺がめちゃくちゃ通っていた某店もご多分にもれず。近場の人気店にアゲインストする如く、マイナー台を中心にバラエティ豊かな機種構成だったものが、北斗の増台とともに幾度かのリニューアルを経て、ついぞ一階はオール北斗。二階の半分くらいも北斗。あとは沖スロ! という、なんか久々に会った読書好きの姪っ子が、気づけばガングロで自分のことをあーしって言うようになってました……みたいな、嫌な大変身を遂げておった次第。といっても、これは別に珍しい話でもなんでもなく。当時はどの店も大体そんな感じだったわけで。取り立てて騒ぐような事でもないんだけどもね。

さてそんな折。今では考えられないけど、当時は「朝イチから特定の小役を成立させておく」みたいな、プチモーニングみたいなサービスが普通にありまして。北斗においては「中段チェリー」を朝イチで出現させておきますねというサービスが、全国各所で行われておりました。そういう専用の打ち込み機があったのか、はたまたスタッフさんが深夜に手動でやってたのか知らないけど、その店も特定の日には「全台中チェ」からのスタートになっており。んで俺もその日はその店で朝から北斗! と決め、有給までとってよくならんでおった。

んでその日もご多分に漏れずならんで台を確保して、んで打ってたわけだけども。まあ北斗のシステムを知らん人のために説明すると、中チェが大当たりに結びつく確率は高確率状態で100%。それ以外だと25%になる。どのタイミングで引いたかによってぜんぜん違うんだけど、まあ言っても滞在比率的に高確率じゃない方が高いわけで。別に中段チェリ=確定じゃないのね。

んで、これ知ってる人がほとんどだけど、当時は「北斗世代」と呼ばれる「中身をあんまり知らない人」が大勢いて、その人にとっては「中チェ=激アツ」なわけです。初心者ほどそう。んで、何がいいたいかというと、これ「サービスの中チェをハズしてめっちゃ怒って台パンするひと」というのが、当時大量にいたわけだ。

当時も今と同じで、打ち出しの時間というのは決まっていて、着座して、号令とともに一斉に打つわけね。で、早い人は2ゲームくらいで台パンする。いや、せめて前兆32ゲーム回して当たってないの確認して怒ればいいのに。あまりにも怒りが沸くのが早すぎる。で、パッとそいつの方見ると、明らかにガキなわけです。しかも複数名。みんなでバンバン叩く。当時はまだギリギリでホールを取り巻くカオスな香りがちょびっと残ってた時代で、どう見ても17歳以下だよね、という子でも、わりと普通に打てちゃってた。まあ地域差もあるけどね。

店がサービスで入れてくれてるモーニングチェリーを外したガキが2ゲームで台パン。しかも複数名が時間差で。面白がって叩いてるのよね。

これ流石に普通に打ってる大人が怒るわけで。いやいやいや。まずありがとうございますだろと。そして繰り返しいうけど2ゲームは早漏すぎるし。色々とおかしい。というわけで、そういう状況にブチ切れた人というのがやっぱいて、はい、今から打っていいですよ、の10秒後にドン! と響いた打撃音に被さるように。

「ウォォイッ! ウルセェぞこのクソガキァッ! ダキャオラッ!」

と、どう見てもクソ怖い職業ですよねみたいな、あぶねえ兄ちゃんが、真横にいたそのガキ集団のひとりの首根っこをひっつかんでどっか連れて行こうとする。ガキはガキで「何が悪いのか分からない」という顔で抵抗する。お店は諸事情によりクソ怖い人のほうを止めてガキを逃がそうとする。周りの客は心境的にクソ怖い人のほうを応援するわけで、そこでなんかもう店と常連の分断が起きるわけです。

これはガキが悪いんだけど店も悪い。ホールでガキを見ることは今はもうほぼないが、当時だってあんまり見ない時期になっていたわけで。いくら片田舎の小さいホールだとしても、これは流石に怠慢すぎた。

で、何が起きたかというと、ホールのスタッフ(女性)がその怖い人に一生懸命謝るわけですよ。俺はこれを見て、大変胸糞悪い気分になった。少なくともおそらくバイトのその女性は悪くないし。身分証確認の徹底やら台パン注意の指示なんかはもっと上のレイヤーから飛んできて然るべき。だから謝るべきはそっちなんだけどもね。

結局、義憤に駆られてガキを叱るようなひとは、女性がペコペコ謝ってるのに怒鳴り続ける真似はせず。「アホくさ! もうええわ!」と32ゲーム回す前に店を後に。俺もなんだか気持ち悪くなって、32ゲーム回した後に(ぶっ込む前提で家を出たのに)遊技を辞めてしまった。なのでガキがその後、追ンだされたかどうかも分からない。

ぱちんこは「装置産業」とはいうけど、やっぱサービス業には間違いないわけで。根底にはひとがいる。5号機の最序盤に閉店しちゃった件の店舗の跡地を目にした時、俺はただただ「だよねぇ」と思った次第。