今回は老舗メーカー西陣の思い出というテーマになるわけですが、個人的にはごく一点を除けば楽しい機械をたくさん作ってくれたいいメーカーです。古くは風営法改正時、1300発機全盛の頃のキャプテンルーキーシリーズや、一発台として活躍したエレックス・サンダーバードなど、思い出深い機種は幾つもあります。サンダーバードは一般台仕様としても楽しめる機種でしたが、権利発生とパンクを何度も何度も繰り返すのに疲れ果て、その後一発台となって生まれ変わってからは相当打ち込んだ覚えがあります。ただ、根本的にパンクは避けられないので、当たってからは再度の飛び込み入賞をしないよう、人一倍ストロークに気を使ったりして定量まで打ち続けたものです。

 西陣と言えば羽根モノという印象がありますが、確かにそれは認めざるを得ない。熱烈なファンの方も多かったと思います。コミカルな役モノキャラを作るのが非常にうまく、旧要件時代で言ったらベースボールやゴングⅡ、魔界組やおジョーズランドなど、良くこんなキャラを考えつくなぁと感心したものです。新要件時代になっても西陣の快進撃は続きますが、まあそれは割愛します。ニューモンローやびんびんバラエティ、ヘブンブリッジなど、検索すれば幾らでも名機と呼ばれ称される機種が出てくると思います。

 デジパチでは花満開シリーズを取り上げないわけにはいかないでしょう。私も個人的に好きなシリーズです。特に大画面液晶時代になってからは効果音や楽曲にも力が入っており、Clairさんが歌う「結晶」など、機種そのものの楽しさ、面白さを引き立てるために挿入曲にも力を入れるという姿勢には感心しました。

 ただ、花満開と言えば当然爆裂CR機の先駆けとして取り上げないわけにはいかないのですが、結局今に至るパチンコ客離れ、市場の減少を招いたのも本機をきっかけとしてあれよあれよと言う間に全国的に広まったカード化、それに伴う爆裂CR機の普及、現金機の衰退といった早急な変化にあります。

 CR機の問題点が各メディアに取り上げられるようになった頃、何人か業界人の方が言っていました。あの堅い社風で通っている西陣がどうしてあんな機械を出したのかと。確かにCR機がなかなか普及しない状況下の中、普通に考えて検定に通るわけがない仕様の機械を出す道理がありません。こんな機械持ち込みやがって、社に帰ってもう一度まともな機械を持って来いと、普通の検定機関ならそんな風に一蹴したことでしょう。そもそも検定自体がまともに行われたのかが不思議でなりませんし、それまでの連チャン機のような、連続打ちでは連チャンプログラムが発動しないが、単発打ちやアタッカーのフルオープンなど、意図的に何かしら工夫をこらせば連チャンするといったある種のトリックが仕込まれていたわけでもありません。誰がどんな風に打とうとCR花満開の性能はそれまでの機械を軽く凌駕するものでした。

 そしてCR花満開登場から約30年が経過した昨年3月、西陣が事業の廃業を発表しました。皮肉なもので、CR花満開でCR機時代の幕開けを演出し、その後の業界の流れを決定づけたのですが、いつしか業界そのものの変容に自らがついていけず、撤退に追い込まれてしまったわけです。花満開という機械そのものは非常に良くできており、確変突入と継続率に別段インチキをせず、普通のCR機として、または普通のデジパチとして市場に送り出せば良かっただけと個人的には思っています。何か妙なことをやって客をのめりこませ、それがCR機という本来不必要なものの普及に一役も二役も買い、結果的に現金機は淘汰され、今に至るわけです。

 私が冒頭でごく一点を除けばと言ったのはこういうところにあります。楽しい機械を生み出す力があり、特に羽根モノの楽しさ、面白さは前述の通り、他メーカーの追随を許さないほどの独創的なものと言っていいと思います。ですが、CR花満開から始まったカード化とCR機の普及、それに伴う現金機の衰退、業界全体のインフレ化……、きっかけを作ったのは紛れもなくCR花満開の登場からでしょう。褒めてあげたいところはたくさんあるが、どうしても納得いかない点があると、そういうことです。

 なんだかお堅い話になってしまいましたが、とにかく個人的にはまだまだ頑張ってほしかったメーカーです。と思っていたら、西陣ブランドのパチンコ機製造を手がけるソフィアとその関連会社が円谷フィールズHD傘下に収まるといったニュースが飛び込んできました。西陣ブランドの機械がまた打てる可能性が高まったわけで、とりあえずこれは素直に喜んでいいかもしれません。今後の動向に注目しておきたいところです。