はるか遠い昔、シリカゲルの幼なじみと、三枝の国盗りゲームというテレビ番組の公開収録に行きました。時は初代ガンダム時代。当時ご贔屓の声優たち、三ツ矢雄二さんや古谷徹さんが参加するという事で、追っかけとして収録に行ったわけです。ちなみに私は古川登志夫さんのファンでした。

夜遅くなるということで、幼なじみの親戚の家に泊まらせてもらう事になったんですが、郊外というか、陸の孤島みたいなニュータウン育ちの私には、大阪の中心街は怖かったです。夜に出待ちをして、小さなフィルムカメラで追っかけ撮った車の写真は、現像しても真っ黒けで何も写っていませんでした。

それでも「撮れたかな」と言いながら、暗い夜道を二人で歩いたのを、今でも思い出せます。ハッキリ思い出せるのは、匂いの影響じゃないかなと思います。途中にあるガソリンスタンドの前で「私、ガソリンスタンドの匂いが好きなんだよね」と彼女が言って「へ~」とビックリしたものでした。私は未だにマジックインキの匂いでグエッとなりますし、コールタールっぽいものやフェリーの匂いみたいなのも苦手です。

コロナ後遺症なのか何なのか、いつもではありませんが「鼻が異常に利くようになった」というのがあります。先の遠征先のホールでは、柔軟剤のような消毒液のようなニオイがして困りました。

過日、じゃじゃサンがホールの香り戦略について書かれていましたが、それで「ああ!」と納得。お店はあの一度しか訪れていない、ガールフレンド(仮)を打ったホール。角の席だからかなぁ…と思っていたのですが、とにかくずっと匂いがしていて、不思議に思ってたんです。

確かに柑橘系でしたが、私は合成洗剤や柔軟剤を使わない人間で、それは何故かとたずねたら、ベンベン、香りに酔ってしまうからです。だから残念ながら、ちょっと気持ち悪かったです。ずっと「お手洗いの芳香剤がこっちまで流れてるな~」と思ってました。その記憶があるため、いいお店なのに足が向かないんだろうと思います。

もしかしたら、マイホは香り戦略がないから居心地いいのかも……。駅前のサブホは喫煙室が設けられていますが、換気か建物の構造上か、うっすら煙草の匂いが流れてきます。パチンコ店が禁煙化になって誰よりも喜んだ(愛煙家の皆さんごめんなさいね)私ですので、この店もあんまり行かなくなりました。

ただ、煙草ではない銀色のニオイという表現に賛同してくれる方がいました。いつだか、年をうんと取って、目も見えなくなったら、懐かしい香りを嗅がせてほしいなと思ったりします。

匂いが記憶と直結していると書いた事がありますが、意思疎通が難しくなっていたとしても、銀色のニオイで私の頭の中は、一気に賑やかなホールへと向かうでしょう。

介護の現場でも、試すのはどうだろう。周囲にはわからなくても、本人には「懐かしい匂い」に呼び起こされるものはあるような気がします。最後の晩餐ならぬ、最後のひと嗅ぎをリクエスト出来るなら……どうかなぁ、マイホの匂いかも知れませんね。

その匂いで思い出した記憶が、口角がわずかにニヤッと上がる「勝利」であればいいのだけれど。

まぁ別に、猫のお腹の匂いでもいいのだけれど。

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