もうすでにある程度鎮静化した気がする話題で恐縮ですが、本日は例の体操選手の喫煙・飲酒問題とぱちんこ業界の違いについてタラタラ語ろうと思っています。

良く知らないという方の為にあらすじを簡単にまとめておくと

・19歳のオリンピック代表選手が代表としての活動中に飲酒・喫煙をした事により代表を辞退した

・これに著名人含む多くの人が処分が厳しすぎると声が上がる

・賛否両論入り混じったものの結論は変わらず。

・五輪の追加登録期間を過ぎてから発覚した為、辞退した選手の穴埋めも出来ずに本大会へ

こんなところでしょうか。

結論から言えばボクは「処分は妥当」「行動規範の意味を皆さんもうちょっと考えてみて」ってスタンスです。

では本題へ。

代表権「はく奪」ではなく「辞退」と当初から報道されていたのに

最初に感じた大きな違和感は、本人と協会がきちんと話し合った上で「辞退」と最初から報道されていたにも関わらず、さも協会がそう言わせたとばかりに選手を擁護する声が続出したこと。

話し合いの詳細はブラックボックスなわけですから、「辞退させられた」という邪推が巻き起こるのも無理はないのですが、「辞退」という事は本人の意向も含まれているわけで、その点にフォーカスしたところでただの陰謀論にしかなりません。

そう決めつけて協会を批判するのはあまりにも脊髄反射がすぎると言いますか、中身がよく分かっていないなら、分かるまでとりあえず黙っとくって選択にならないところがSNS界隈の怖いところです。

日本体操協会は公益財団法人って事を忘れすぎ

「喫煙・飲酒ごときで」「なら交通違反でも今後代表を辞退させるのか」このような言説が非常に目立ちました。

実際、いわゆる軽犯罪で会社をクビになる、仕事を干される、そのような罪と罰のバランスはおかしいとボクも思います。

けれども、それはあくまでも民間で活動する我々の感覚。日本体操協会は公益財団法人であって、民間の活動とそれを同一視するのは違う、と申し上げておきたいところです。

公益財団法人とは自法人の利益の追求だけでなく、社会にさまざまな好影響を与えることを目的に活動する団体です。公益財団法人の設立には、一般財団法人を設立後に公益性の審査を経て、内閣府または都道府県の行政庁の公益認定を受けることで「公益財団」として税制上の優遇措置などが受けられるようになります。公益財団法人はあくまで公益事業を行う民間の組織で、国や自治体に所属する「公務員」とは根本的に異なります。

五輪で金メダルを取ることだけが公益財団法人 日本体操協会の役割ではありません。

体操の普及を通じて青少年の育成や成人の健康に寄与する社会貢献活動も大きな使命の一つで、国や地方自治体からの補助金・助成金も日本体操協会の予算に入っています。

その中で、五輪代表になるような選手は小さい頃からいわゆる「選手コース」として選抜され、両親の負担は勿論あるにせよ、トップに至るまでに多くの公的・人的なサポートがあります。

大会が行われる会場やナショナルトレセンなどのハード面は勿論、指導者や審判員などのソフト面も、様々なサポートなくしてアマチュアスポーツは成り立ちません。

そうした数々のバックアップを受けて、五輪という最高峰の舞台に立つ選手には、それまで育成・普及・強化に携わってきた数多の人々の思いを背負って立つ責任と自覚が無ければなりません。

だからこそ代表選手とはかくあるべし、という「行動規範」があるわけで、トップ選手の振る舞いがピラミッドの最下層にまで影響するからこそ、例え成人であっても代表活動中に飲酒・喫煙をしてはならない、という文言に繋がるわけです。

行動規範の全文はこちら

ちなみに、「税金使うな！プロ化出来ない・自分達で稼げない競技なんてやめちまえ！」と言うのは非常に簡単ですし、そういった声の全てを否定する気はありませんが、少なくとも今までは社会的に必要と認められているから日本体操協会に限らずアマチュアスポーツの公営財団法人が複数存在している、という点も忘れてはいけません。

ぱちんこ業界にも自主規制はあるけれど…

ぱちんこ業界の場合、広告規制が最も分かりやすい例でしょうか。風営法上は「著しく射幸心を煽ってはならない」という包括的な文言しかありません。広告の一つ一つをいちいち明文化なんて出来ないからです。

けれども、ぱちんこ業界はかくあるべし、という監督官庁の指針があって、だからこそ様々な自主規制があります。

では、ぱちんこ業界で自主規制を軽犯罪レベルで破ったからといって追放されたりするでしょうか？勿論、そんな事はありませんよね。

界隈で煙たがられて居場所がなくなるような事はあっても、個人も法人も追放出来る仕組み自体が無いし、むしろ皆が率先して規制のスキマを狙おうと腐心しているような業界です。

そんな現状を憂慮する人の方が少ないくらいです。

そして、それが許されるのは、ぱちんこは民間企業の集合体かつ成人のみが遊技出来るものだからです。

ぱちんこ業界がいくらハチャメチャやってようが、そもそも不要不急の産業だし、大人しかできないものだから基本は自己責任だし、青少年への悪影響も建前上はほとんどない。

だから、悪目立ちして社会に迷惑さえかけなければ、好きなように経済活動してくださいっていうのが、ぱちんこ業界の基本的な立ち位置です。

その他の民間企業も似たようなものです。社会的な意義をビジネスの為に掲げはするけれど、原則として優先されるのは利益を上げる事、結果を残すこと。そんな世界では、結果を出せる人なら小さなことには目をつぶる。それが当たり前です。

しかし、公益財団法人はそうではない。

そこをごっちゃにするからおかしな話になります。

平たく言えば、「飲酒喫煙上等！」というメチャクチャ強い代表選手がいたとして、体操界の青少年がそんな人物に憧れてしまったらたまったもんじゃない、というのが大多数の判断だから「行動規範」がそうなっています。

公助があって成り立っていて、公助も求められている団体の人々と、我々に求められるものが同じなわけがないでしょう、と。

そして、違反した際の処分についても、決めるのは我々外野ではなく責任ある本人と協会。それだけの話ではないでしょうか。

代表選手の活動中の飲酒・喫煙がどれだけ悪影響があるのか、それを誰よりも分かっているからこそ「辞退」したのではないでしょうか。

なぜ、宮田選手は処分に対する不服申し立てをしないのか（その権利があるのは倫理規定に明記されている）。

なぜ、そうした本人たちの決断を外野が尊重できないのか。

「たかが喫煙・たかが飲酒で！」という的外れな擁護が、選手たちを更に追い込んでいることにどうして気づけないのか。

そんな発信をしたぱちんこ関係者を見るにつけ「さすが風俗産業の住人やな……」と頭が痛くなります。

彼らはちょっと「やったもん勝ち」「結果が全て」の世界に慣れ過ぎている。誰だって子ども時代、公的サポートを散々受けて育ってきたのに、あまりにも公助の持つ意味に対して無関心すぎる気がします。

今後の行動規範は？

今回、多くの人から処分の不当性を訴える声が上がったことは果たして良い事なのか。

ボクは「あまりにも煽情的に声を上げすぎ」という気がしています。

そもそも五輪の時にしか体操を見ない人がほとんどですよね？

体操にお金や労力を差し出した事がある人どれだけいますか？

そんな外野が、なぜこんなにも偉そうに体操協会を批判できるのか不思議でなりません。

もしも、今後「行動規範」をもっと緩くする方向になるのであれば、それは体操協会の選択なので異論はありません。

そして、飲酒・喫煙を公言しながら結果を残し、スポンサーを個人で集められるような選手が出てきたら、行動規範を逸脱していようがそいつを代表に選べ！という話になるのかもしれません。

それが、行動規範を変えるキッカケになるのかもしれません。

ですので、是非とも今回「たかが飲酒・喫煙で！」と騒いだ皆様が、その選手をスポンサードして代表選手へと押し上げて下さい。

……

できるわけがない、そんなこと。

世の中の流れを考えたら答えは明白です。だから、今の行動規範が必要だったのだとボクは考えていますし、法律ではなく団体の規範な以上、処分の大小を定量的に決める必要も無いわけで、そこは選手と協会に任せる以外、外野が言えることなどありません。

まずは応援してあげよう

結局のところ、現時点での体操日本代表選手に求められる行動から逸脱してしまったからペナルティを受けた。それは至極当然だと思うし、宮田選手が辞退を受け入れた以上、もうアレコレ騒ぐべき話でもありません。

外野の人間がやれることは、無知な擁護でも無責任な批判でもなく、若くして過ちを犯してしまった本人が再起できるよう、今後、有形無形の応援をしていくことではないでしょうか。

自分のやってしまったことの重みは、トップアスリートである彼女自身が誰よりも分かっているでしょう。

正に地獄を見ている、その心情は我々には計り知れません。

でも、もう十二分に罰は受けました。だから、今後は自分を恥じることなく、雑音に惑わされることなく競技を再開できるよう応援しましょう。

そして、彼女が再起する時、今回の件を蒸し返して騒ぐような、心ない人が１人でも減っていく世界であって欲しい。そう、願っています。

■万回転　プロフィール

  • 1978年生まれ　♂　
  • 累計15年間パチプロしちゃってごめんなさい
  • CR銭形平次の捻り打ち動画をアップしてしまいネットでプチ炎上した事を機に安田プロと個人的な親交が生まれ、悠遊道へ寄稿する事に
  • 色々あって完全にパチプロを引退。
  • 現在は悠遊道動画チャンネルの何でも屋

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