ガラスの向こう側へ 【第17話】
会社を辞め暫くの間、南部さんの弟子にしてもらおうと車の運転手をする事となるが結果はNO!
これからの時代、釘師だけで生計を立てて行ける時代ではないと、南部さんの口利きで販社で勤めながら夜に釘師として活動する中馬さんを紹介される。
中馬さんとは、ゆきちが釘師デビューの日、調整ミスで新台にブドウ畑を作った現場を目の当たりにした人だ(笑)
業界歴は長く、一発台全盛期の頃には釘師の第一線で活躍されていた人物で、主にパチンコ台をメインに扱う販社で昼間は営業、夜は釘師をされている方…
営業と言っても頭を下げて台を買ってください!と、ペコペコする様なイメージではなく、どちらかと言えば買う側の方がペコペコしている…。
初めて見た中馬さんを見た時は、この人はヤクザなのかと思ったほど、南部さんに勝るとも劣らない強面の人物だ。
昼間働き、夜は釘師として活動し仕事終が終わると朝から営業している寿司屋で、毎日寿司をつまみながら酒を呑み、その後競艇に行くと言う、一般人には到底理解できない生活スタイルな中馬さん、この人はいったい、いつどこで寝ているのだろうと疑問に思うが、本人いわく、酒飲んでるときは寝てるようなもんや!といつも自慢げに話していた。
ゆきちが人生で出会った中で一番のショートスリーパーであるのは間違いない。
そんな強面な中馬さんであるが、親分肌で面倒見がよくゆきちは兄貴分として慕っていた事もあり、南部さんの口利きがあった後もスムーズに事が進んでいった。
そんなある日、中馬さんから話があると行きつけのすし屋に呼び出され、新たな道が開かれる事となる。
中馬さん【オッ!来たか(笑)】
中馬さん【ほな、早速話しよか!】
中馬さん【お前、前の店でえらい派手にスロット触ってたやろ】
ゆきち【はぁ…】
ゆきち【モーニング入れたり、仕込みは入れたりしてましたよ】
ゆきち【ちょっと知識有れば、合法的にB物に変えれますからね(笑)】
中馬さん【B物が合法?その辺りがようわからんねや?】
中馬さん【裏言うたらアレと違うんか…】
ゆきち【アレでは無くて…(笑)】
ゆきち【ようはサブ基盤にいろいろと悪戯できるスイッチが付いてる機種がありますねん。】
ゆきち【主基盤は触れ無いから、メーカーが合法的にサブ基盤に不思議なボタンを着けた感じですわ(笑)】
中馬さん【ワシは基本的にスロット触らんからのぅ…】
中馬さん【まぁええわ!】
中馬さん【おまえ店紹介したるから、スロット屋やらんか】
ゆきち【スロット専門店ですか?】
中馬さん【そや!】
中馬さん【馬鹿オーナーのどら息子(二代目)が三ヶ月で傾けた、どうにもならん店やけどな(笑)】
中馬さん【その店立て直したら、何とか道は開ける思うで…】
ゆきち【うーん…】
中馬さん【お前はほんまショボイの(笑)】
中馬さん【迷ってる暇なんかないやろ!】
中馬さん【やらんのやったら、今日でお前は終わりや…】
中馬さん【前の店に頭下げて、サラリーマン店長に戻れや!】
中馬さん【まぁ、好きなようにしたらええ!】
中馬さん【己の道は己で切り開くんや!】
中馬さん【それが出来んようでは、釘師になんかなれんわ(笑)】
釘師には遠回りかもしれないがチャンスが訪れた瞬間だった。
もうやるしか無い!…
今自分が持っている知識を一番発揮出来るのは釘では無く、スロットの知識とその情報網…
無い仕事を待つより、今あるチャンスを生かしていこうと考え、その話に乗る事を決めた。
ゆちき【中馬さん!】
ゆきち【その仕事やりますわ!】
中馬さん【よっしゃ!わかった!】
中馬さん【まぁ呑め(笑)ワシの奢りや!】
当然の事だが、釘の技術は南部さんや中馬さんに敵うはずも無い…でもスロットの知識に関しては負け無い自信は有った。
規制のかかり始めた4号機ではあったが、上手くやれば釘師の道に繋げる事が出来るかも?そんな気持ちでもあった。
『中馬さん行きつけの寿司屋さんで…』早朝から寿司を食べながら話しが始まった。
中馬さん【まぁ呑めや…】
ゆきち【せっかくですけど、今日は酒辞めときますわ!】
中馬さん【どないしてん(笑)珍しいのぅ…】
ゆきち【いゃぁ~さっきのスロ屋の話しですけど】
ゆきち【どんな状況なんですか?】
中馬さん【何が?】
ゆきち【何がって…稼動状況ですやん(笑)】
中馬さん【稼動状況?そんなもん言う必要も無い思うけどな(笑)】
中馬さん【客は全くオランねんから(笑)】
中馬さん【早い話し、社員が一人と兵隊が二人。合計三人】
中馬さん【その三人より客は少ない言うこっちゃ(笑)】
中馬さん【まぁ、あれ以上悪くなる事は無いから心配せんでもええやろ(笑)】
ゆきち【………】
中馬さん【このままやったら三ヶ月もしたら自動的に潰れるやろな】
中馬さん【どうにもならんから白旗降ってるんや】
中馬さん【先代の社長の時は立派な経営してはったんやけどな…】
中馬さん【二代目が継いでから見事に全部壊して行きよった…】
ゆきち【何店舗潰したんですか?】
中馬さん【パチンコ屋四店舗と不動産業、それと工場も殺りよったな(笑)】
中馬さん【並の二代目と違うでぇ~】
中馬さん【筋金入りの壊し屋や(笑)】
中馬さん【お前の再出発には調度良い店やと思うで…】
ゆきち【一回その店連れて行って下さいよ。】
中馬さん【そやな!ほな今日の夜にでもワシの家に来いや!】
中馬さん【しばらくはワシがお前の面倒みたるから(笑)】
ゆきち【ほんまですか♪】
中馬さん【南部さんが弟子とらんからしゃぁないやんけ(笑)おかげでみんなワシが面倒みなアカンようなるんや…】
中馬さん【おかげで金出て行くばっかりや(笑)】
ゆきち【朝から毎日寿司食べてるから違いますん(笑)】
中馬さん【やかましわ(笑)】
その日の夜中馬さんと一緒にスロット専門店に向かい、噂の二代目社長に会いに行った。
釘師としての活路を見出だす為に、先ずは設定師を志す事にした。
なんの打ち合わせも無いまま、中馬さんに連れられ、壊し屋と名高い社長さんに逢いに行く。
向かった先は、某県某所に有るスロット専門店…
到着したのは閉店時間の少し前、約束の時間を過ぎても壊し屋社長はまだ店に現れなかった。
社長が来なければ何も始まらないので…これからお世話になるかも知れぬ?スロット店の状況を偵察する事にした。
中馬さん【どないや?酷いやろ(笑)】
ゆきち【ちょっと想像以上ですね(笑)】
四号機と言えば設定変更で朝一特典が付く機種が多い中…このお店は閉店間際になってもなお、朝一状態の台が大多数を占めていた。
設置機種全ての名前は書けないが、Kingパルサー・スーパービンゴなどを筆頭に朝一特典の有る台ですら稼動して無い状況は、完全にスロットファンの信用を失った証でもあった…
ゆきち【じゅ、重傷ですよコレ…】
中馬さん【そやの(笑)】
中馬さん【別に嫌われても構わんから、思った事全部社長に言うたってくれ…】
ゆきち【は、はい…】
そうこうしてる間に二代目社長が現れた…
壊し屋【あー遅れてすんません!】
ゆきち【いえいえ、どうもはじめまして…】
中馬さん【ご無沙汰しとります…】
壊し屋社長の第一印象は…
タヌキとパンダを足してニで割ったような感じ!京楽のキャラ、タヌ吉君に似た感じの人だった(笑)
簡単な挨拶を終えいよいよ本題に入って行く…
壊し屋【どうですか?中馬さん何か繁盛する良い策ありませんかね?】
中馬さん【まぁ今日は策がどうとかの話しに来た訳じゃ無いので…】
中馬さん【わし所の若いのがスロット得意でしてな…】
中馬さん【コイツに見せたらどうなるか?思い連れて来ましたんや…】
壊し屋【へぇ~ゆきちさん……ですかぁ~設定はやった事有るんでっか?機械の事解ってはるんかな?(笑)】
ちょっと上から目線で、人を小バカにした喋り方が気にいらなかったが…
まぁ、言いたい事だけ言うてやろうと思い、見たままを素直に伝えるつもりだった。
ゆきち【設定と粗利管理は元店長の時にやっていました。】
ゆきち【運営に関する一通りの事は出来ると思いますが…】
壊し屋社長【こんな店やけど繁盛店にできますやろか?】
ゆきち【繁盛店ですか?】
ゆきち【結論から先に言うて無理やと思いますよ!】
壊し屋社長【な、何ででっか?】
ゆきち【お客の信用を完全に失ってますから!】
ゆきち【地域密着型の店舗で、お客の信用失ったら終わりですよ】
壊し屋社長【し、信用でっか…】
ゆきち【設定は誰がやってはるんですか?】
壊し屋【店長がやってると思いますよ…】
ゆきち【お、思うって…(汗)】
ゆきち【ホルコンと釘帳見せて貰って良いですか?】
データを見た瞬間に目を疑った…
ゆきち【これゴト入ってるんと違いますか?】
壊し屋【えぇぇ~ホンマですかぁ】
中馬さん【あらら、こりゃ~やられとるかもな…】
中馬さん【ちょっとホールで調べて見よか…】
明らかにそれと解るデータ異常…ホールコンを見て何故気付かないのか?疑問で仕方無かった。
次回更新へ続く