ネタがないときは、マイナーな機種の想い出話でも。今から思えば第一弾となった『サイレントメビウス』は、周期抽選にぴったりのメインシステムなのに、なぜかARTも一発抽選だったという迷機でした。しかし、今回は違います。中押し手順をする前提ならば全てに無駄がない。私の好みでは5号機史上5本の指に入る名機です。
販売はオーイズミで開発は平和・オリンピアの『美川さそり座のサラリーマン』です。登場したのは、まだ4号機が残っている2006年11月。出玉性能はストック機に敵うわけがなく「5号機のみになったら冬の時代になる」と、多くの方に思われていた頃でしたね。
・赤BIGは純増240枚+100GのRT
・青7CBは純増174枚+50GのRT
・REGは純増102枚
RTは、1Gあたり約0.6枚の純増。途中でボーナスが成立しても揃えなければ継続する完走型となっていました。
当時は、小役よりもボーナスを優先するリール制御しか認められていませんでした。ボーナス絵柄を狙ってしまうとRT終了の危機となるだけでなく、成立後のメイン小役すら取りこぼしかねません。そういう意味では、システムを理解してきっちり目押しをする中〜上級者向きの機種と言えるでしょう。
○演出を活かすための中押し手順
実際、ボーナスと同時当選の可能性のあるチャンス目の強弱判別と弱チャンス目を1枚で獲得することを兼ねる手順は、中押しでボーナス絵柄のないところを押さねばならないものと難易度はやや高め。しかし、この手順を続けている限り、ボーナス絵柄がテンパイすることもありません。実に効率も素晴らしいものでした。もう設置店がないので手順は書きませんけど(笑)。
RTの終わりには連続演出でボーナスの有無を告知します。営業マンとして外回りをしている美川さんが商品を売ることができれば……いや、ちゃんと売ることは少ないか。「タダよ〜」と商品をあげちゃっても連チャン確定です。
完走型RTでリーチ目がバンバン出てしまっては、特にリーチ目が出ない展開だと興醒めですよね。中押しは、きっちり小役を取りつつもボーナス成立を知ることは拒否できました。最後の商談をドキドキしながら見守るためのスパイスでもあったのです。
そんなバカバカしい演出は通常時も同様。美川さんがサラリーマンとか成功する絵が浮かばないじゃないですか。通常時の連続演出もほとんどがムチャクチャなわけです。演出を外しても悔しくないといいますか、怒ったら大人気ないといいますか。『猪木』シリーズのプロレス演出以外と思ってもらえれば分かりやすいかな。
逆転パターンは、レバー操作時の「おだまり〜」です。これを如何に楽しむか。嬉しいものとするのか。
通常時の連続演出は、レア小役などできっちり始まって最長で3G継続します。これも素敵でした。無意味な煽りもほぼありませんでしたし。しかし、ボーナス察知手順は2手で終わってしまいます。勝ちにいくなら最速ですが、それは風情に欠ける気がしてしまいます。そこで、1Gだけ中押しを続けて連続演出の終わりを合わせることとしました。偉くないほうのボーナスから狙っていけば「おだまり〜」が出たら赤BIG確定です。コインロスするので、記事などではお勧めしませんでしたが(笑)。
より多くコインを獲得したりチャンスを察知するためだけではなく、演出の楽しみをコントロールするために手順の使い方を考えられたのです。どう奏でるか。楽器みたいと思えましたよ。こんなことを思えた機種は他にないかな。
今時点で完走型RTを作るならば、ボーナスよりも小役を優先するリール制御となるでしょう。メイン小役を取りこぼしてのボーナステンパイで察知されてしまうとか。そんな設計をしてくるメーカーはないかと思います。小役優先制御が認められる前、5号機初期だから出てきた絶妙なバランスの名機ではないでしょうか。