パチンコやパチスロを打っていて感情的になる、感情が揺さぶられる時というのはまあ激アツハズレを食らった時とか、通常当たりが続く時とか、甘海で初当たりを10回引いて一度もST連しない時とか、まあ大抵が悔しい時ですね。ただ、パチンコ、パチスロの大当たり抽選の仕組みを理解してからは、こんなこともあるさで平静を装うようにはしています。しかし、冷静に考えてみれば30年以上も前に仕組みは理解しているわけで、それでも悔しい思いはしてしまうという現実に、まだまだ人間打ち込み機にはなれない自分を感じます。

 大当たり抽選と演出は直接的な関係はないわけで、当たりと決まったら当たり時に選択されやすい演出が選ばれ、散々焦らして当たったりするわけで、そこがパチンコの魅力だったりします。保留の色が変化したり、擬似連や連続予告が続いたり、役モノが落ちてきたり、特に自分の好きなタレントやアニメとタイアップした機種なら、より一層楽しく感じられることでしょう。

 しかし、過ぎたるはなお及ばざるが如しではないのですが、何事もやり過ぎは良くないです。具体的な機種を挙げていったら相当数に上るのでやめておきますが、昨今の客離れの要因はこういうところにもあると思います。我々のような、ある意味ではパチンコ、パチスロに精通しているような人間でさえ、こういうハズレ方をするのかと、ここまで煽りに煽ってハズレるのかと、精神的に滅入ることがあるわけです。

 自分の昔からの友人、知人のほとんどはパチンコ、パチスロをやめてしまいました。長い、当たらない、時間がもったいない、そんな理由ですが、こちらとしても無理をして時間を作ってパチンコを打てとは言えません。世の中には他にも楽しいことはたくさんありますし、特に家庭を持っている人は、パチンコやパチスロに時間とお金を使うのなら家族と一緒に過ごす時間を増やすとか、そんな感じになるのでしょうね。

 TVゲームなら別段いいのでしょうが、パチンコ、パチスロは何だかんだ言ってお金がかかっています。業界の客離れの要因は射幸性の高い機械が多くなって客がついていけなくなったということもありますが、前述したように、過剰演出に疲れた客が離れてしまったという現実もあろうかと思います。感情が悪い方へ揺さぶられるのは良くないわけで、メーカーもそういったところは真剣に考えるべきだと思います。

 ネガティブな話ばかりしてもしょうがないので、個人的にああこれは凄いなぁと素直に感じたことも書きます。90年代初頭まで、パチンコ台の枠はどのメーカーも皆似たようなものばかりで、単に色使いが異なるとか、ちょっと上皿やハンドルの形状が違うとか、その程度の差でした。そこに突如現れたのが、SANKYOのナスカ枠です。新台のF・ウォーズ IF・ネプチューン等の登場に合わせ、1994年の9月、我々の前に姿を現しました。

 当時、大きなホテルで発表会を開いたとかで、業界内ではかなり話題に上っていたと記憶しています。何でもイタリアのデザイナーがデザインしたとか、ナスカ枠の名前の由来はナスカの地上絵をモチーフにしているからだとか、まあ今となっては記憶がハッキリしませんが、とにかくエラく格好のいい台枠が出てきたものだと正直感動しました。発表されてすぐに上野の大手ホールに2シマくらい設置されたF・ウォーズ I を見た覚えがありますが、壮観でしたね。当たると電飾がキラキラして、凄く綺麗でした。また、自分で打って気づいたのですが、丸型のガラスが分厚く、玉の当たる音がうるさくないんですね。後は台上部に付いているステレオスピーカー、これが結構音が良く、こういうところも感心しました。まあ、台自体は単なるノーマル機で可もなく不可もなくといった感じでしたが、とにかくこの台枠は今後のパチンコ機の流れを変えるだろうとか、勝手に想像していました。

 その後、ナスカ枠はFF枠に変化したのですが (代表機種はF・ギンガ)、正直ナスカ枠ほどの衝撃はなく、まあこれはこれで格好いいというくらいの感覚でした。他メーカーも黙って見ているわけはなく、その後はどのメーカーも独自枠の開発に着手し、今やもう百花繚乱と言わんばかりに台枠デザインは進化を遂げました。でも、やっぱり個人的にはナスカ枠ほど、感情的に何かが揺さぶられたという台枠はありません。あぁ、そう言えば仏壇枠がありましたね。余談になりますが、昔、某G誌で台キープ選手権という企画ページがあったのですが (個人的に好きな企画で、まあ色々と問題はあったのですが、また復活してほしいなぁと思っています)、内容は単に台を確保するには何が適切かといったもので、定番のタバコやらライターやら、ハンカチや少量の玉を上皿に入れておくとか、そんな内容でしたが、そのような並み居るライバルを抑えて毎回トップ争いを演じていたのが大根と位牌でした。

 この企画の素晴らしいところは実践第一主義という点にあり、あらかじめ用意しておいた物品を実際のホールで設置されている台に置いておくわけです。例えば、買い物帰りの主婦が台をキープするのに適切なのは大根だろうということで、空き台に大根を置いておく (笑)。しばらくすると、何百何十番台に大根を置いて席を離れているお客様、少々お時間が経っております、至急台の方へお戻りくださいという場内放送がかかります。それまでの時間を競うわけです (台キープの時間が長ければ長いほどよしとされる)。

 これで毎回優秀な成績を収めていたのが前述の通り、大根と位牌でした。この企画は色々と物議を醸し、最終的には打ち切りの悲運に見舞われるのですが、もし仏壇枠があの頃に登場していたら間違いなく、位牌は仏壇枠の剣のギミック周辺あたりにそっと置かれていたことと思います。そのあまりの自然さに店員さんは気がつかないかもしれません。元々、こういう枠なんだろうと。南無阿弥陀仏……