夏バテが来た。あの恐るべき夏バテが──……。

筆者は元来不健康な性質をしてることもあって、ちょっとの気候変動ですぐ体調を壊すという厄介極まる体質をしていた。特に「夏バテ」は大変キツく、エアコン付けると食欲無くなるし消すと暑くて死にそうになるということで、マジで行水して乗り切ってた時期なんかもある。これは多分同じ性質のひともいると思うんだけども、暑いなら暑い、涼しいなら涼しいで一定してれば何の問題もないんだけど、これが暑い涼しい暑い涼しいみたな感じで小刻みに変動するとすぐ具合が悪くなっちゃうのである。

そんな細かく気温が変動することなんかネェだろと思うかもしれんが、これがしょっちゅうあるのだ。つまり「エアコン」である。買い物のためにお店をハシゴするときなんかが最悪で、店内の涼しさと屋外の暑さがこまめに俺の自律神経(かどうか知らんが)に対して「働け」「働け」「体温を調節せよ」と鞭打った結果、多分彼は機能的に働くのをヤメてしまうのだ。つまり自律神経失調症である。夏バテの原因はコレらしい。自律神経というのは自らを律しとる神経なわけで、これが乱れると何も律しない。動けないのだ。メシも食いたくない。ただベッドに横たわってぼーっと天井のシミを数えていたくなる。なぜか。律して無いからだ。乱れてんのである。自律神経が。

ほんと25歳くらいから毎年毎年食らっており、いいかげん、どうやったら回避できるんだろうと真面目に考えた事もあったけどついぞどうにもできず。冬の間に蓄えた脂肪も夏にはすっかり削げ落ち、フラフラになりながらようやっと秋を迎えて活動を開始するみたいなのをずっと繰り返していた。ちなみに冬のエアコン。つまりヒーターは不思議と具合が悪くならない。細かい外気温・内気温の変動がバテの影響であるなら「冬バテ」だってあってもおかしくないハズだが、筆者はそういうのは一回も聞いたことがない。どうやら「バテ」というのは暑い事が大前提であり、ベースが寒くてトッピングが暑いみたいな状況では発生せぬようだ。

とにかく秋から翌年の春くらいまでは「来年こそなんとかしよう」とか思いつつ、実際それを考えてる時にバテてないもんで「喉元すぎれば」なんとやら、あんまり悩んだりせず、またバテてるタイミングはそもそも何も考えたなくないもんで、結局バテてるときもバテてないときも何も考えないまま35歳らへんまできた。

が、その頃に丁度わが嫁さんと出会う事になり、何か色々メシを作ってくれたりするようになった結果、見事に体質が変化。若かりし頃から悩まされていた「夏バテ」と、その後7年くらい無縁でいることができたんだが、今年はダメだった。バテた。失調したのだ。

んでこれ、今年のバテた瞬間というのを俺は完璧に理解していて、それが「パチ屋をハシゴしまくった時」だった。

8月の上旬である。俺はどうしても「バイオハザードヴェンデッタ」が打ちたくて上野界隈を闊歩していた。まだ導入から一ヶ月も経ってないんでなかなか空きがなく。ムカついて浅草まで戻って二軒しかないパチ屋を行きつ戻りつしてたら突然めっちゃゲロ吐きたくなった。

「あ……! 夏バテだ……!」

エスカレーターで地下のパチ屋に向かいながら上空を観ると、エアコンの通気口があった。ゴウゴウと音をたて、冷風が店内に充満している。振り返ると下降する視点の向こう、カンカン照りの真夏の空がチラリと見えた。アスファルトが蒸す匂いと、キンと冷えた店内の空気。夏なのか。いや、もう夏は終わったのか。まて、また暑いぞ。違う、寒い。今年の夏の暑さが異常なのもあるが、暑さとか寒さが相対的なものだとして、この異常気象のなかだからこそ、一方でまた、今年のパチ屋は寒すぎであった。体感温度的にはマジでノルウェーくらいあり、ちょっと頑張ればいいキングサーモンが捕れそうな感じがした。トイレに駆け込んで、便座の上に座って、しばらくぼーっと目を瞑った。やる気ゲージがみるみる削れていくのがわかった。失調してるのだ。ついさっきまでアレだけ打ちたかったバイオももはやどうでも良かった。ただ家に帰って横になりたい。

それから約二週間ほど。いまだ夏バテは完全には癒えず。先日ちょっと遠い所のIKEAに夫婦ふたりしてでかけたけど、案の定最後は倒れそうになった。IKEA寒い。

何が言いたいかというと、外が暑いのはもう分かってるしみんな薄着で来とるんで、ほどほどで良いっすエアコン。暑いからって必要以上に下げる必要はねぇ。普通のエアコンで充分涼しいのだ。失調するからマジで。久々に「すんません寒いんでエアコン上げてください」って言ったもんね(結局打った)