東京都が2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた環境整備の一環としてまとめた「東京都受動喫煙防止条例(仮称)の基本的な考え方」では、パチンコホールを含む娯楽施設は「原則屋内禁煙(喫煙専用施設)」とされている。
これに対して東京都遊協では、現場への影響が非常に大きいことから、今年9月の定例理事会の決議に基づき、受動喫煙防止対策について他県の事例同様、対策を“努力義務”とすること、加熱式タバコを“たばこ”の定義から外すことなどを求める意見書を提出していた。
(中略)
東京都遊協では、署名用紙と署名内容を記したチラシを組合加盟ホールに送付。ホールは店舗内にチラシを掲示した上で、来店客、従業員及びその家族等の署名を集める。集めた署名は返信用封筒で12月25日までに「受動喫煙防止対策署名活動」事務局へ返送する。なお今回の署名はWEB署名(http://shomeikatsudou.jp/)も可能となっている。
―――引用ここまで
パチンコユーザーと喫煙者の親和性が高い事は今更言うまでもないだろう。
厚生労働省の調査で平成26年時点での成人喫煙率は19.3%(男性32.2% 女性8.2%)となっているところ、パチンコユーザーの喫煙率は6割とも7割とも言われている。
現場の状況を鑑みれば要望自体は至って自然な流れだ。
特に埼玉県や千葉県、神奈川県と隣接し、少し離れればタバコが吸えるホールがあるとなれば、喫煙者がそちらに流れるのは容易に想像できる。
一部の店舗にとっては、いわゆる出玉規制の新規則以上に死活問題と言える。
だが、「対策を“努力義務”とすること」という一文は業界全体としてみれば悪手だ。
罰則の無い努力義務など、何の実効性も持たない事は周知の事実であり、それを自ら願い出るのは明確な禁煙反対と取られても仕方ない。
世の中の8割以上の人が非喫煙者であり、世相を見ても国の方針としても今後、更に喫煙率が低下していく事は間違いない。
これでは非喫煙者をユーザーとして取り込む意思が無いと言っているも同然で、明らかに世の流れと逆行している。
少なくとも完全分煙を受け入れた上で実際に現場の状況を鑑みて猶予期間を願い出る程度が最低ラインでは無いだろうか。
勿論、小規模店では完全分煙すら難しいのは分かる。
しかし、それは他業界とて全く同じ事で、飲食業界で言えば大手チェーン系の居酒屋は分煙が出来ても個人経営の小さな飲み屋ではそうはいかない。
※9月に発表された条例の基本的な考えとして、敷地面積が30平方メートル以内の小規模バーやスナックは禁煙の対象外とされている
パチンコ業界だけが特別扱いとなるのは、果たして正しい方向性と言えるのだろうか。
この問題と直接関連はしないが、現在Jリーグでは年間の試合スケジュールを秋開催~春終幕のいわゆる秋春制に移行するかどうかで揉めている。
サッカー界ではトレンドの主流である欧州のスケジュールに合わせるメリットが大きい事は理解しつつも、東北や北海道を始めとする豪雪地帯で冬に試合開催が難しい事から、こちらも地域性・個別の事情により中々意見がまとまらない。
ただ、Jリーグでは組織が整備されていて金銭面の援助も含むバックアップ体制を模索している。
一方、パチンコ業界は全国的な組織である各団体と地域組織である都道府県遊協がバラバラに動いている。
対戦相手ありきのスポーツと個々の事業者の集まりであるパチンコ業界を比較する事はおかしな話かもしれないが、風俗産業であり規制産業でもあるパチンコ業界はある程度、業界全体の方向性に統一性を持たしていく必要がある。
交換率の問題、喫煙の問題、広告規制の問題、それらは少なくとも全国的に足並みを揃えなければ結局はやったもの勝ちになり、それが業界全体の首を絞める事はこれまでの経緯を見ても明らかだ。
トヨタがEVでイノベーションを起こしてシェアを拡大していくのと、マルハンがシェアを拡大していく事の意味が全く異なるように、業界として見るべきはその構造の根本にある。
様々な逆風をピンチではなくチャンスと捉え、業界を引っ張るリーダーの出現が求められている。