悠遊道で映画レビューは過去何本か書きましたが、パチンコやギャンブルに遠からず関係したものという縛りがあります。

数年前に旧Twitterで募集したところ、協力してくださった方々がいて、何本か集まりました。その中のタイトルのひとつがこれ。間寛平ちゃんが歌った「ひーらけひらけ♪」のヒット曲をご存知の方も多いのではないでしょうか。

濡れた欲情・ひらけ!チューリップ

公式サイト

1975年 日本
監督:神代辰巳
出演:石井まさみ 安達清康 芹明香 間寛平

ピンクパンク映画だ!信頼度……約99% 激アツ!

日活ロマンポルノと聞いて、ふわっと浮かぶ「アノ感じ」そのものの作品であった。イギリスのコメディ映画のようなオフビート感覚も有り〼

童貞の釘師アキラと、女にモテモテのパチプロ見習いヒロシという、パチンコに生きる若い2人の男たちによる、歪な形のバディムービー。

この凸凹コンビに色々なタイプの女たちが絡み、クセツヨな伝説の釘師や凄腕パチプロたちとが織りなすドタバタ劇である。出生の秘密だの何だのと、もう何でも有りだ。

冒頭から何度も出てくる「女は押し倒すのが先」という乱暴な台詞。昨今のフェミやジェンダー問題やらは一旦置いて、ここは「色んな女がいるなあ」と楽しむ映画ではないかと思う。

現代のアダルト界では考えられないような展開を魅せる濡れ場にも驚かされた。パチンコのチューリップと連動するパッカーン映像も衝撃的。さすが日活。

女の裸がどれも生々しく撮られており、不思議な事にAVと比べて「どちらが興奮するか」と問われると、もしかしたらポルノの方に軍配が上がるのではないか。そんな臨場感があった。現在は細かなシチュエーションと共に、美形やスタイル抜群の女優がずらっと揃っているが、どこかしらSFっぽく「女たちが遠い」気がするからだ。

ポルノには人間の、女が生まれ持つ業がさらけ出されているからであろう。厚化粧であろうが性癖があろうが、10人いれば10人とも違う、どの女もタフで素晴らしい。女のカラダは本当に美しいなと再確認できるのだった。

パチンコ玉みたいな太陽やな…というモノローグにも何だかグッとくる。

「では3発勝負で。」とパチプロが釘に挑むシーンが何度か出てくる。3玉か5玉で当たりをモノにしてこそプロってもんだと。ヒロシは負けてばかりいるわけだ。そもそも「何の戦いなんや」という疑問すら吹っ飛ばされる、まさかのそんなアホなのオスイチ勝負。しかし儀式のような撮り方で緊張感を生んでいた。ホンマにあったんかなとすら思えてくる。

昔を知る方々には、もっとグッとくるであろう場面が満載。商店街に軒を連ねるパチンコ店は、街の風景に馴染み溶け込んでいる。開店前の押し合いへし合い、何より出てくるパチンコ台がなんと「手打ち」なんである。「あなたワクワク、お店ハラハラ」といった店内マイク。

ここで「シャク師」と呼ばれる者たちに磁石ゴトをされた場面は、二つある見所の内のひとつであろう。

俺が愛情を込めて調整した釘や、それをインチキで汚すな!

とアキラが、モンモン入りのイカツいゴト師たちにぶつかっていくからだ。

そこからは、わあわあですわ。そして1人の女を巡って戦うラスト。アキラのある行動によって、ヒロシが言う「パチンコは命を賭けてやるもんや」が二つ目の見所。トンデモ台詞に笑うはずが何故が泣けてくる。

ちなみに濡れ場はどれも甲乙付けがたし。女房のためを想うパチプロの行動も良かったが、屋台を引っ張って激走するヒロシと2人の女。このおでんの女:ジュンコは必見だろう。パワフルな女たちの中、尽くす系でしおらしく見える彼女が、実は一番の強い情念の持ち主であった。女同士のバトルを経て、河原で騎乗位に持ってく流れに、女の意地ってやつがどんなもんかを見せてくれるのだった。

ハチャメチャでも伏線があり、ちゃんとストーリーがつながっている。パチンコ狂想曲と書いてラプソディー。こんな当時から、パチンコの「流れのはやさ」について行けない者たちの嘆きが描かれているのも大変、興味深かった。