自分は老人が大好きだ、というわけでもないのだが、昔から何だかんだと気の合う人間は70を超えていることが多い

僕自身、どの親族よりも祖母と生活していた期間が長かったことも、その一因かもしれない

小さい頃にドリフターズや、ひょうきん族を見て皆が笑っているときに、暴れん坊将軍を見て育てられたのだから、それもそうか

だから、マツケンサンバで陽気に踊る上様をみて度肝を抜かれた度合いは、きっと同年代の誰よりも大きかったと思う

初見では本当に鼻水を吹きましたもん

 

三月三日(金)

よっちゃんとは、自分が最後に通いつめた店の横にあるファストフード店で、毎朝のように顔を合わせていた

パチンコ屋での会話に真実なんて欠片もあればよい

皆が不快にならなければ、それでよし、たのしいことが一番だ、の感覚が日常にもはみ出しており、よっちゃんに何か聞かれるたびに毎回違う答えをしていた

よっちゃんはこちらが投げた冗談のほとんどを理解してくれる頭の切れる器の大きい爺様だ

これが若い人だとまれに怒らせてしまうことも合って、僕はある程度の年齢を重ねた御仁が好きなのかもしれない

僕が悪意なく冗談を云えば、それを察してよっちゃんも冗談で返してくれる

お互い楽しもうという気持があれば、大して面白いことを云わなくても互いにニヤニヤくらいはできる

そういう相手がいることは大変幸福でもある

「おにいちゃん、それ旨そうだな」

「ああ、よっちゃん、昨日から発売されたハンバーガーだよ、半分食べる?」

「ああ、いいよ自分で買ってくるから」

「な~、そんな遠慮することないじゃん、僕とよっちゃんの仲じゃない、ほら」

遠慮して顔を背けていらんいらんしている鼻先に突き出したハンバーガー

強引に勧めたこともあって、じゃあと、包を開くと中身の肉だけ抜き取られてパンだけになっている

さっきまで遠慮しいしい、善意の押し売りを少し面倒そうにしていた事が馬鹿らしい&気恥ずかしいような照れ笑いを顔いっぱいに浮かべている

「バカにしやがって!!」

「どーしたの、ほら、遠慮せずにたんとお食べ♪」

「ああ、そうだ、おれも今日おにーちゃんに食べてもらおうと思っていいもん持ってきたんだ」

ポケットに手を突っ込んで何かを取り出そうとしている

「ああ、ありがとう。でも今日はもうお腹いっぱいだからいいや」

危険なにおいがするので、椅子から軽く腰を浮かしはじめる

「まあ、そう言わずに貰っておけって」

立上るよっちゃん、席を立つ僕

そして、そこから追いかけっこが始まる

朝から大変元気である

 

そうしたやり取りは、日々の渇ききった気持に大変潤いをあたえるものであり、通う店を変えた今も、この縁を大事にしたいとの思いから、月に一度、よっちゃんが通っている病院に付き合うことにしている

病院デートと名づけたその日は、茶や飯をすすりながら、互いのひと月の近況を、冗談をまじえながら報告しあって過ごしている

毎月第一火曜と金曜が病院の日で、今回は本日三月三日(金)をデートの日にあてようとの話になっていた

病院のある駅には、僕がたまに打ちに行っている店もあるので、少し早目に家を出て、後日の下調べとして貯玉再プレイ分で遊んでいたのだが、起きたら来る筈の連絡がいつまでたっても来やしない

予約の時間が迫り、いくらなんでもと、こちらから電話をしてみるともう病院とのこと

「よっちゃん起きたら連絡よこせって言ったじゃん!!」

「おにーちゃん家を出るときに連絡をよこすと言ったろう!!」

互いに半笑いでなじり合う

そして、少し時間が遅くなってしまったことに加え、いま打っている台がかなりの良台であることを、こちらの希望をふくませて、それとなく伝える

ちなみに、仲良くしてもらうようになって数年、話すべき機会に、僕がどのようにして日々を過ごしているかを告白してある

案の定こちらの真意を酌んでくれて

「あんだよ、んじゃ~今月は七日の火曜だな」

「ありがとう、よっちゃん、んじゃ火曜はお肉だね」

「いいよいいよ、おれが叙々苑でしか食えないからって予約なんてしないで」

「いやいや、よっちゃん、そこのお店は並に大盛、特盛とバリエーション豊富で、あたまの大盛なんてのも頼めるから、遠慮せずに好きなもの食べていいからね」

やはり、お互い楽しもうという気持があるので、大して面白いことを云ってるわけではないがニヤニヤしてしまう

そんなこんなで、七日の火曜にはハンバーグでも食べに行ってきます

今日はごめんよよっちゃん

でも、起きたら連絡よこすといったのはよっちゃんだからね

 

よっちゃんの通う病院のある駅の駅前店/28玉交換/無制限

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